生命保険はじめました
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投資先を探して株式四季報などをぱらぱらめくっていると、「この会社って、上場していて意味あるの?」と疑問を抱きたくなる企業が少なくない。
オーナー一族がいまだに株式の大半を握っていて、一日の平均売買高が数百~千万円と、流動性もほとんどない。本業からキャッシュフローが出ているので、借入金もない。公開企業という社会的ステータスを一つの目標としてやってきたのかも知れないが、上場にまつわる様々なコストを考慮すると、成長のための追加の資金調達の必要がないのであれば、上場を続けるのは割に合わないのでは、そんなことを考えさせられるケースが少なくない。ここのところにわかに話題になっている、敵対的買収の可能性をも考慮すると、このような誘引はますます強くなるのかも知れない。 この点、新生銀行内のバイアウトファンドであるラフィア・キャピタルが、ロキテクノらJASDAQ企業を相手に何件かこの類のディールをやっているのだが、同ファンドの責任者を務めるダン・フジイは、僕のかつての上司でもあったりし、少し舌足らずな日本語と迫力のある英語で会う人を魅了する、超ナイスガイだ。これは雑談。 この手の動きがメイク・センスするのは、そもそも株の流動性が少なく、かつ非公開化を進める経営者自身が株の大半を保有するオーナーであるから。3分の2以上の同意があれば、少数株主を現金で強制的に買い取ることができるスクイーズ・アウトができるようになっている。 それが、時価総額2,000億円を越え、経営者が(株を10%強握る創業一族の義理の弟だとしても)株式を自ら保有していないケースで、かつ自らが実質的に支配する取締役会の決議を一気に取ったような今回のケースでは、事情は大きく異なる。取締役会の賛同は得ているが、実際には取締役一同が本提案以外の代替的オプションを協議できたとは思えない。 説明会での発言を読む限り、今回の提案を行なった社長は、会社を自分のものと混同しているような印象を受けずにはいられない: ********** 株式の非公開化を決めた社長は26日、都内で開いた投資家向け説明会で、社長は「これまでアクセルを踏んだことがない。上場企業である限り、収益性が大事だと思って、粗利益率の管理に注力してきた」と語り、1997年の社長就任以来、収益性や経営効率の向上を経営の最優先課題と位置づけ、売り上げ至上主義の欲求を抑制してきたことを明らかにした。 そのうえで、非上場化した後の経営手法について、「一度、アクセルを思いっきり踏んでみたい」と指摘。企業を「スポーツカー」に例えながら、「どこまでスピードが出るものなのか、ブレーキはしっかり効くのか確かめたい」と述べ、一気に売り上げを拡大できるのか、戦略変更に即時対応できるなどに挑戦したいとの意向を示した。 ********** 数字を見る限り、この会社は、株主への還元を実施するために成長に向けた投資が滞っていたわけではなく、むしろ逆で、株主価値の向上をあまり図らず、マーケティング投資を大きく振舞ってきた。結果、株価はずっと低迷してきている。そんな企業が、「株主価値向上にフォーカスするのは違和感を感じる」「今後は従業員を初めとした様々なステイクホルダーをもっと大切にしていきたい」と言うのは、何かしっくり来ない。 記者会見では非公開化のメリットをとかく強調していたようだが、彼の本当の狙い何か?今回の提案の表に出てきていないが忘れてはならないのが、再上場による大きなキャピタルゲインを狙う買収資金のスポンサーの存在。2,000億円強の買収資金は一部借り入れ、一部エクイティとなるのだろうが、借金によって銀行は金利収入が入り、そしてエクイティスポンサーは当然高い再上場益を狙っている。結局、非公開化したとしても、遅くとも5年以内には再上場することは決まっているのだ。そして、そのときに今回の社長も、多額の上場益を得ることになるのだろう。 時価総額が約2,400億円、うち企業が保有する現金が300億円。不安定な要素が多い小売業なので、2,100億円のうち借入は約半分、残りの1,000億をエクイティで出資したとする。利益を毎年15%増やすことができたら、3年後の企業価値は1.15の3乗で1.5倍の3,200億。借金1,100億を引き算すると、株式価値は2,100億円と2倍になったことになる。社長は義理のお兄さんに100億借りたら、3年後に100億返しても手元にもう100億残ることになるわけだ。ここで借金の返済は0としたが(実はこの会社は対してFCFがなさそう)、投資を削ってFCF出して借入返済できれば、この価値はもっとあがる。というより、実際には投資を抑制して借入を返済していくのでは。 もっとも、そんなに簡単に話が進むのだろうか。日本にいる買収ファンドは皆レピュテーションを過度に気にし、現経営陣と敵対してまで対抗ビッドをかけるとは考えづらい。しかし、昨今の日本の株式市場には、いろんな人たちがいるので、どんな動きがあるか分からない。 今回の4,700円の提案はここ数年の株価から見ると確かに魅力的だ。しかし、当該企業の実力や財務状況からすると、もっと魅力的な提案ができるに違いない。誰よりも会社のことを知っている現社長がこの値段を出してきているということは、本来の価値はもっと上、そう信じているに違いない。 た・と・え・ば、の話。僕だったら上場している休眠会社を買収して借り入れ+増資し、既存株主への特別配当+株式交換のオファーを行なう。すでに会社にある現金300億円に加え、今期EBITDAの3倍にあたる700億、あわせて1,000億円を大判振る舞いだ!発行済み株式総数は52百万株なので、これで一株当たり2,000円近い配当。さらに、株主は新会社の株主として、追加のアップサイドを狙っていけます。以前本ブログでも書いたが、配当のための借金、いわゆるrecapitalizationの提案を行なうわけだ。 もちろん、既存経営陣との対立や、各種法律的な手続き、今後のレピュテーションリスクなど、容易にできるとは考えていない。しかし、先に述べたように、小さな企業の大半を保有するオーナー一族による非公開化とは異なり、今回の提案およそ自分の利益のためのように見える。だとすれば、既存株主の利益を表に出して、より大義名分あふれる提案をすることができるのではないだろうか?もちろん、従業員・顧客・サプライヤーの皆さんも、大事にしまーす。いずれにせよ、TOBが終了する9月1日まで、今後とも目が話せない案件であることには間違いない。 * 学生という無責任な立場ゆえ いつも以上に書きたい放題。 ** 前回コメントいただいたichiroさん、僕もまったく同じことを考えていました。ゆえに、今回のブログ。 (おまけ) 発表にいたるまでの株価の急騰は、気持ち悪い。 また、投資銀行のアナリストの動きも、なんだか不自然。今回のMBOのアレンジャーに近いとされる某大手I-Bankは、本年4月に経営陣との面談ののちに対象銘柄を一度格下げしていたにもかかわらず、今月に入って急遽「アウトパフォーム」に格上げをしている。 その理由として、 ①下半期の売上が良好の見通し ②新規ブランドの開発に目処がついた ③マーケティングコストの管理を強化 の3点をあげているが、いずれも3ヶ月で見方が買い⇒売り⇒買いと変わるほど、短期で改善が認められるものとは考えられない。 もう一社は、「目標を達成しないリスクとして、現社長が病気や怪我をして采配をふるえなくなることがある」とまで書いて、現社長の立場を擁護するにまでいたっている。これは経営が良好な企業についてはおよそ成り立つものであり、ことさら個人名を出して擁護していることに、どうしても違和感を感じずにはいられない。
by diwase
| 2005-07-27 14:02
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