生命保険はじめました
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(以下の記述は、すべて公開されている情報に基づくものであり、僕がリップルウッドで働いていたことによって得られた情報は含まれていないことをお断りしておく。もちろん、僕の見方に偏りがありうることもご容赦いただきたい)
********** 「新生長銀、人材流出、再建の道険し-具体性欠く戦略、障害多く」 2000年2月1日 日経金融新聞 3ページ 日本長期信用銀行の米リップルウッド・ホールディングスへの正式な譲渡が二月末に迫った。海外資本の傘下での新たなスタートとなるのに伴い、同行では行名変更などイメージの刷新を検討している。ただ、新銀行の経営を担うと期待された幹部職員が相次いで退社していることもあり、再建への道筋が険しいことに変わりはない… 「長銀譲渡、米リップルと最終契約-再建へ道険しく、すでに1000人流出」 2000年2月10日 日本経済新聞朝刊7ページ 日本長期信用銀行の再建が米リップルウッド・ホールディングスの下で始まる。リップルウッドを中心とする投資組合ニュー・LTCB・パートナーズ(NLP)の八城政基代表は再建に強い自信を示す。だが、国有化からすでに一年四ヶ月。人材の流出が進むなど再建の道は平たんではない…(中略)…「資産を切り売りして長銀を実質的に解体・清算し、キャピタルゲインを得るのが目的」という見方は依然として金融界には強い。 「新生長銀の行方(上)「脱邦銀の夢」-執行・監視を完全分離」 2000年3月8日 日経金融新聞1ページ …新たな経営体制で取り組む新規事業は幅広い。投資信託やクレジットカード、投資顧問などの資産運用、証券化業務、中堅・中小企業向けの融資、不良債権の売買事業、企業の合併・買収(M&A)の仲介…。おう盛な事業意欲は実現不可能ではないものの、夢のようにも見える。優先順位が見えず、「実現性が分からない」(外資系アナリスト)との声も多い… ********* 新生銀行が昨年2月に再上場を果たして、リップルウッドを中心とした投資家グループがキャピタルゲインを得た際に、「濡れ手に粟」と、あたかもリスクがない儲けであるかのように揶揄された。しかし、当時の報道を振り返ると、再建は確実どころか、相当にリスクが高く、実現困難なものだと見られていたことが分かる。 1998年9月に特別公的管理下におかれて以来、当局は旧長銀の譲渡先を探していた。しかし、買い手候補となる企業は国内金融機関のみならず、産業界も含めて軒並み門前払い。一時は都銀や興銀、産業界に奉加帳を回して長銀買収資金を集め、投資組合を作る「日本版リップル」の奇策も試されたが、興銀の拒否により構想は頓挫。何とか外資に売らないですまないか、とのことで最後まで交渉に残された中央信託・三井信託のグループは、金融再生委員会が提示した条件に対して、「リスクは取れない」と判断して、案件から降りた。リップルウッドの投資家である三菱商事も、政治的に巻き込まれることを嫌がり、本件には投資しないと明確に宣言していた。 国内勢だけではない。政府側のアドバイザーだったゴールドマンは、KKR、ブラックストーンなど、米国を代表する大手PEファンドに声をかけたが、取り合ってもらえなかったそうだ。向こうからすれば、欧米の案件で忙しいのに、こんな訳の分からない案件を手がける筋合いがない。アジアで活発に活動しているJPモルガンパートナーズも当初名乗りをあげたが、比較的早いプロセスでビッドを取り下げた。そんななか、米国ではほとんど知られていない新興ファンドであったリップルウッドのティム・コリンズが、ここで一旗あげようとの思いで、自分の投資家としてのすべてのレピュテーションをかけて、名乗りを上げたのだった。コリンズと組んで投資に参加した元ゴールドマンM&A責任者のクリス・フラワーズも、ヨーロッパで新聞の報道を見て、何かできるのではないかと思い立ったそうだ。何か特別な情報源から聞いたのではなく、普通に新聞を読んで、だ。日本は陰謀めいた話に仕立て上げるのが好きだが、アメリカからしてみると日本は世界の投資ポートフォリオのわずかな%に過ぎない。米国政府が全面的に陰謀を企てたと考えるのは、日本を過大評価していることにほかならない。 このように、当時破綻して混乱の渦にあった旧長銀に対して、リスクを取って資本を提供しようとしたのは、リップルウッドを中心とした投資家グループだけだったのだ。ちなみに、「リップルウッドが買収」と表現されたりもするが、正確には投資主体は「リップルウッド・ホールディングス、およびクリストファー・フラワーズがジェネラルパートナーを務め、シティバンク、ドイツ銀行などの海外投資家によってなる投資組合」である。 ********* よく取り上げられる批判の一つとして、「8兆円もの公的資金が投入された」ということがある。それでは、この8兆円はどのように使われたのか? 手元に、1999年3月末時点の旧長銀の貸借対照表がある。ざっくり示すと、 資産の部 23.2兆円 貸出金(ローン) 13.6 有価証券 2.1 公的資金 3.4 その他 負債の部 23.2兆円 金融債(ワリチョー) 7.6 預金 2.7 借用金 3.9 貸倒引当金 3.6 その他 資本の部 0円 資本金+準備金 0.7 欠損金 0.7 あなたが投資家だったら、この企業にいくら払うか?帳簿上の価値が0円の、株式に。 国の資本注入によってバランスシートがある程度きれいにされたこの時点において、負債、すなわち金融機関や一般国民から借りている金が23.2兆円。この額は確定。これに対して、資産が本当はいくらあるのか、まったく分からない。 まず、3兆円の公的資金が(金銭贈与という形で)すでに投入されていた。この資金は誰を保護するためだったのか?それは、長銀に対して債権を保有している金融機関や一般国民がきちんと弁済を受けられるようにするためだ。さらには、長銀の破綻による金融システムの混乱を避けるため、という政策的な意味合いも大きい。 次に、資産は企業に対する貸出債権が大半を占めるが、評価額の13.6兆円というのがどれだけあてになるのか、信用できない。回収困難な不良債権も、多くが額面のままに計上されているわけだ。一年前の1998年3月末には、この数字は15.8兆円だった。一年前の数字から、2.2兆円もの劣化があったことになる。 さらに、有価証券ということで持ち合いで保有していた株が2兆円(明らかに抱えすぎ)もあるが、これも株式市場の動き次第で、一気に価値が劣化する可能性がある。投資家としては、そんなもの持っていたくない。さっさと今の価値で、売り払ってしまいたい。ただ、市場で売ると株価全体に売り圧力がかかってしまうので、国としてはそれはやめて欲しい。そこで、国側は譲渡の条件として、長銀が保有していた株式を(ほぼすべて)買い取る約束をしたのだ。この点、資産買取につぎ込まれた公的資金は株式市場保護のためだったと言うこともできよう。また、そもそも対価として株式を入手しているのだから、実施的な損失はその後の売却損分に過ぎない。 23.2兆円の資産がありますよ、と言われてもあてにならない。資本の部が0円だということは、少し資産額が劣化するだけで債務超過、破綻になってしまうわけだ。23.2兆円の借金を負っていることは確実なのだが。どれだけ本当に資産があるのか、デュー・ディリジェンスを行なって自ら査定させてください、そう頼んでも当局は応じない。資産内容がもっと悪かったことが明らかになると、他行の格付けにも影響するからだ。 明らかに疑念がかかる貸出債権を、資産査定もさせずに国の言い値である13.6兆円で買え、というわけだ。こうなると、まともな投資家はやめてしまう。デュー・ディリジェンスができない案件など、リスク管理がしようがないからだ。ただし、一つだけやり方がある。ロス・シェアリングという方式で、譲渡後に不良債権が回収不能になって損失が生じたら、その損失分を国と買い手が共同で負担する、というものだ。これによって、買い手も損失を最小限に抑えようとするインセンティブが働く。買い手側は、そんな提案をしたそうだ。 しかし、国はこの提案を拒否。「法律の根拠がない」ということと、後年度に負担が発生することを嫌がったためだ。そこで、国側の弁護士が民法の瑕疵担保条項を援用することを提案。すなわち、民法には当事者が特段契約に定めなくとも、瑕疵のあるもの(要するに不良品)を売った場合、売り手は買い手にまともなものを引き渡す責任があるとされている。今回の場合は譲渡対象は銀行であり、貸出債権そのものでないので民法の適用はないが、同様の趣旨の規定を、当事者間の合意として契約内容に入れようというわけだ。そこで、債権の価値が2割以上に下がった場合は、売り手たる国が責任を持って買い取る、という条項が盛り込まれた。買い手は資産査定ができず、売り手の言葉を信用して買っているわけだから、それくらいのことはしてもらわないと困るのだ。 結局、価値が0円、将来的には大きなマイナスになる可能性がある株式に対して、リップルウッドを中心とする投資家グループは名目的な額である10億円で株を買い取り、銀行の運転資金として1200億円を第三者割り当ての形で資本注入して、投資したわけだ。これに加えて、国も優先株の形で2400億円を出資してもらった。 ********** 日本の銀行は過去には不動産を担保に取り、それに対して貸していた。企業の事業キャッシュフローのリスクを判断し、それに基づいて適正な金利を取るという、当たり前のことをやってこなかったわけだ。新生銀行は、銀行業の基本をなす、当たり前のことを、「貸しはがし」との批判を浴びながら実行してきた(もちろん、その実行に一部妥当でない行為も含まれていたこともありうる)。そごう向けの債権放棄に応じなかったことも非難されたが、今からしてみれば、それも極めてまともなビジネス判断だったと思う。新生銀行の再建の過程には、銀行業を商売として成り立たせるために必要なことを、猛烈な逆風の中でやってくることによって達成されたわけだ。なお、リスクに応じた金利をチャージするということは、その後他の銀行でも当たり前のように行なわれるようになった。 既存の貸出債権の整理を進めると同時に、投資銀行業務の拡大を行なった。外資系の投資銀行からチームごと引き抜いて、欧米流の付加価値業務を始めた。30代の外人を役員にしてしまうなんて、邦銀では考えられなかっただろう。この結果、新生銀行の収入の約半分が、いわゆる投資銀行業務からなるようになった。この業態転換は目覚しい。 システム部門にしてもしかり。シティ時代に一緒に仕事をしていたインド人のCTOを連れてきて、彼を役員にする。彼は数百人のインド人ITプロを連れてくる。それまでは数千億円をかけて作っていた銀行のシステムを、Windowsとインド系ベンチャーのソフトウェアを使って、わずか数百億円で作りかえた。大手銀行でマイクロソフトのサーバーが使われたのは初めてのことで、ビルゲイツが自らお礼を言いにきたそうだ。そんな、大きな経営改革を地道に進めてきたのだ。 ********** そんなわけで、テクニカルな内容も含めて色々書いて来たが、僕がいいたかったことは、 ① 旧長銀は買収当時には非常にリスクが高い投資だと思われていた。世間には成功を疑われていた。日本勢は何度も投資する機会を与えられたが、及び腰で、誰も名乗りをあげなかった。そんなリスクを、外国投資家グループが取った。 ② 8兆円の国民負担というが、これによって保護されたのは旧長銀に対して金を貸していた金融機関、預金をおいていた企業、および一般国民(ワリチョー保有者)、さらには当時の日本の金融システムそのものである。外国投資家がこれによって直接的な利益を受けたわけではない。 ③ 旧長銀の株がたったの10億円で譲渡されたとの批判があるが、上記のバランスシートを見ると旧長銀は借金23.2兆円、資産23.2兆円以下という債務超過会社であり、株式の価値は0円どころか、マイナスの価値しかなかったことが分かる。そんな会社に、投資家グループは1200億円のフレッシュマネーをつぎ込んだわけだ。 ④ 瑕疵担保条項は、「売ったものが不良品だった場合、売主は不良でないものを引き渡す義務がある」という民法上の規定。国側が資産査定もさせずに、言い値で怪しい資産を買い取らせるのだとしたら、少なくとも国が行なった査定が正しかったことを保証し、それよりも実際の価値が低かった場合には補填することは、決しておかしい話ではない。 ⑤ 本件投資は、極めてリスクが高いものであった。そして、再建は奇跡的な経営手腕によって達成された。高い投資リターンをあげられたのは、国からの補助があったからではなく、非常に高リスクで難しい再建に成功したことに要因があり、それは賞賛されるべきだ。 ここでは触れていないが、新生銀行の再建までの道のりはまさに涙ものだったと思う。多くの人が傷つき、苦しみながら、当初は「夢」のように考えられていた目標を達成した。国をよくしたい、そんな一途な思いでロンドンの隠居生活から日本に戻ってきた八城さんは、たえず売国奴扱いされながらも、ただ一人逆風のなか自分が正しいと信じたことをやり遂げてきた。僕は八城さんと何度もお会いしているから、彼がどんな思いで新生銀行の再建に携わってきたか、ある程度分かっているつもりだ。だからこそ、僕は新生銀行の再建という偉大な業績を、あたかも簡単なことだったとか、悪いことをしたかのような批判めいた口調で論ずるのを聞くと、悲しい気持ちになってしまう。 以上の理解をするために、僕は結構な時間をかけて調査した。自分できちんと事実を調べずに、マスコミで語られていることを鵜呑みにしていると、いかに間違った見方をすることになるか、自分自身思い知らされた。 ********** (おまけ:話題の瑕疵担保条項) 9 . 貸出関連資産の瑕疵担保 ① クロージング時において機構は新生長銀に貸出関連資産を売却・譲渡したものとみなす。〔8.1(1)〕 ② クロージングから3年以内に、当該資産に瑕疵があり、2割以上の減価が認められた時は、新生長銀は当該資産の譲渡を債務者毎の全てについて一括して解除することができる。〔8.1(1)〕 ③ 解除の場合、機構は当該資産の返還と引き換えに当該資産の当初価値(当初引当金控除後ベース。以下、同じ。)に相当する金額(それまでの間に返済額があれば、その額を控除した額)を新生長銀に払い戻す。〔8.2(5)〕 ④ ②の「2割以上の減価」とは、同一債務者に対する全貸出関連資産のその時点での現在価値(その時点での引当金控除後ベース。以下同じ。)の総額が、それら貸出関連資産の当初価値の総額に比し2割以上減額していることを言う。〔8.1(4)〕 ⑤ ②の「瑕疵」とは、当該資産に関し金融再生委員会が「適」と判定した根拠について、長銀買収時から3年以内に変更が生じたか、又は真実でなくなったことが判明したことを言い、変更又は真実でなくなったことがクロージング後の専らパートナーズ社又は新生長銀の責めに帰すべき事由によって生じた場合は「瑕疵」に含まれない。〔8.1(2)〕 ⑥ 金融再生委員会が「適」と判定した根拠が明示されていない場合(例えば正常先の債権は原則として「適」と判定されている)等において、当該債務者に一定の客観的な事実が発生した場合には、新生長銀はそれを「瑕疵」と推定することができる。〔8.1(2)〕 (注) 例:正常先の債権についてクロージングから3年以内に元本又は利息の3ヶ月以上の延滞が発生している場合には、新生長銀は「瑕疵」の存在を推定できる。 (以下略) http://www.fsa.go.jp/frc/news/n082a.html 参照
by diwase
| 2005-02-03 15:05
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