生命保険はじめました
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マートン教授のファイナンス講義、引き続き面白い。(注:以下、非常にマニアックな内容です。)
月曜日は投資家のリスク管理というテーマのなか、プライベートエクイティ・ポートフォリオのリスクをどう図るべきかが題材。通常は上場・売却などのliquidity eventまで簿価で計上されているため、「マーケットと相関が低くリスク分散になるんですよー」と投資家に説明する(ボクもそうしてた)。 しかし、このポートフォリオの本当のシステマティックなリスクを理解しようとするなら、業績のファンダメンタルズはマクロの業界動向に影響される部分が大きいし、投資を流動化しようとするならばその時々の市場の時価評価に影響されるのであるから、未上場企業といえども時価評価されるべきである。実際に、PEの研究の権威であるHBSのLerner教授がやった研究によると、近似値的に出してみた時価評価は、実はボラティリティはそれほど低くなく、投資家が理解しているリスク・リターン性向は正確でない、というのがポイント。これは決してPE投資が悪いということではなく(実際に30年分のデータを提供したWarburg Pincusのリターンは、このような手法でリスク調整したのちも驚異的な結果)、投資家が正確に自身のポートフォリオ投資を把握していないことを問題視しているわけだ。 火曜日は企業のリスク管理の観点から、企業の年金資産・債務をどう見るべきかという問題。年金については積立不足がとかく話題となるが、マートン教授が指摘するのは、積み立て不足よりも資産と負債のミスマッチ、ALM (asset liability management)を問題とすべきということ。例えばGMについてみると、株の時価総額が$13bn、年金負債が$100bn強、年金資産が$75bn程度。この$25bnの積立不足もさることながら、問題は負債のほとんどが確定給付であり、資産の大半が株で運用されているということ。これは言うならば、元本が$75bnで、S&P500のリターンを受け取る代わりに固定利率の債券のリターンを支払う、スワップ契約を結んだのと同じだ。もし時価総額の5倍もの額のデリバティブ取引を行なっているという理解をしたら、取締役会はこの取引をOKするだろうか? 確定給付で積立型の年金であれば、エクイティでリターンを狙うことは意味がなく、債務とマッチしたfixed incomeの資産を持つべき、というのが彼の主張。年金資産はオフバランスであるため、別扱いしてもいいような気になってしまうが、積立不足がある限りは企業の株主にしわ寄せがくるのであり、その限りでは会社の他の資産と区別すべき理由はないのだ。そのような観点から、企業全体の本当のバランスシートを見なければならない。 これら2日間に通じる問題意識は、「ファイナンス理論を元に新のエコノミスクに基づくリスクを見たらこうあるべきなのに、会計上や制度上の理由から、世の中の人たちは間違って理解している」というもの。細かい数字の話をするのではなく、正統派のファイナンス理論が、いかに真実に近い姿をあきらかにしてくれるか、教えようとしてくれている感じがする。 似たような話で、理論ではそうだけどなかなかそうは考えられないな、という例としては、先週にやった、life-cycle modelにおける個人の資産設計というテーマ。個人の資産運用でリスク資産30%、安全資産70%という配分を考えたとする。普通はこれを金融資産だけで考えて、貯金の1千万の配分として考えてしまうが、本来であればこれにhuman capital、すなわち自身に生涯賃金(のNPV)をも資産として考えるべきではないか、とのこと。仮に生涯賃金のNPVが2億円だとすると、自身の資産は2.1億円。生涯賃金のうちリスク資産見合いのものが2割あるとすると、アセットアロケーションとしては2.1億円×30%=62百万円、うちhuman capitalの40百万円がすでにリスク資産となっているので、残りの22百万円を金融資産からリスク資産に投資すべき、ということになる(この場合は借入して株を買うということか)。この考え方を使えば、人は年を取るとリスク回避になってリスク資産を減らすのではなく、human capital部分が減るので相対的に金融資産における安全資産の割合が高まる、ということが説明できる。なんのこったい。これも、ファイナンス理論に忠実に、資産とリスクをwholisticに見る、ということの例なのだろうが。 話はアセットマネジメントのトレンドということに移り、水曜日はalpha transportというテーマで、ある資産で超過リターンを出せるファンドマネージャーは、そのαを他の資産にも移転できる、というもの。題材は、スタンフォードの教授が作った会社がモーゲージ証券化のアービトラージで儲けていたが、のちに先物などを使って、S&Pをベンチマークとして勝つファンドを作って売り出している事例。スワップなどをかませば、不動産の専門家が、どの資産クラスのベンチマークにでも勝てるファンドを作れるというわけだ*。ただ、これってあくまでαはモーゲージから来ているので、投資家からすると今度はαの配分という観点から資産のアロケーション考えなければならないですよね、授業の最後でそう質問したら、その通りだ、とのこと。 そんな、ファイナンス漬けな1週間でした。配られた教科書は、高度な数式がたくさん並んでいて、悔しいがまったく理解できませーん。 * 例えばS&P500ベンチマークファンドとして5億預かったら、実際には4.5億をモーゲージに投資し、残りの0.5億で元本5億のS&P先物やスワップ契約に入る。これによって、デリバティブ部分でレバレッジを使ったベンチマーク投資をしつつ、残った資産を使って自分の得意分野でアルファ/超過リターンを狙っていけるというわけだ。
by diwase
| 2006-02-11 10:40
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